はじめに
今回読んだ本は、神野元基著「人工知能時代を生き抜く子供の育て方」です。
2017年に発行された書籍ですので少し古い書籍になりますが、今まさにAI時代を生きる私や子供たちにとって、避けては取れない問題であったので非常に興味深く読ませてもらいました。
書籍概要
この著者自身も長い期間教育の現場に携わっており、その経緯は著者自身がシリコンバレーで起業している時に遡ります。
当時、AIによるシンギュラリティ―が起きるとの予測がされ、これを知った著者は、これから“シンギュラリティ”に向かう時代に生きる子どもたちに、このことを伝えなくてはならない、そして来るAI時代に”未来を生き抜く力”を身につけさせなければならないと感じたと言います。
シンギュラリティー(技術的特異点)とは、2045年には人工知能が人間の能力を超えることを指し、現存する職業の99%は人工知能がやるようになるという未来予測です。
その結果、著者は日本に戻り学習塾を開きます。
その後、圧倒的に学習効率を上げる必要を感じ、人工知能型教材「Qubena」を開発、子供たちの「未来を生き抜く力」を育てるための「未来教育」に取り組んでいます。そのような著者自身の経験を踏まえた提言となっています。
インプレッション
本書では、人工知能(AI)が日常生活や職業の世界でますます重要な役割を果たすようになる中で、子供たちが成功するために必要なスキルや考え方、どのような教育が必要かを探求してくれています。私自身がぼんやりと子供にこうしてやりたいと思っていることを言語化してくれていると感じる書籍でした。
著者は、伝統的な教育が主に知識の習得に重点を置いているのに対し、AI時代には創造性、批判的思考、問題解決能力、人間関係スキルがより重要になると説いています。彼は、これらのスキルを子供に身につけさせるためには、学校だけでなく家庭でも子供たちをサポートすることが重要であると強調していて、私は強く共感しました。
AIがあれば、従来の暗記型教育は一気に価値を失いますし、AIを使ってどんな創造的な価値を発揮するのかが重要になってくると、私自身が非常に強い危機感を持っています。
また、子供たちが自己学習能力を持ち、絶えず変化する世界に適応できるようにするために、好奇心を育むことの重要性を指摘しています。著者は、子供たちが自分の興味や情熱を追求することを奨励し、失敗を恐れずに挑戦することを学ぶことが重要だと述べています。
本書で書かれていることは今の時代、非常に普遍的なことですが、AI時代においてなぜそれが必要なのかを丁寧な説明と具体的なアドバイスを通して訴えており、これからの時代を生き抜くための子供たちの能力を育成するための参考書と言える内容と思います。
特に印象に残った点
本書の中で特に印象的だったのが以下の3点です。
「極める力」の必要性
これからは、自分自身の興味のあることを見つけてより深く学習する者が高い価値をもたらすとされています。そのために必要なのが「極める力」であり、それを子供が身につけられるように親や教育者のアプローチが非常に重要です。
そのためのステップを、本書では以下のように説明しています。
①目標の設定
期間をを決める(3カ月とか)
②目標の具体化
特定の個人などの具体的な例を挙げる
③課題を抽出する
具体例と自分とのギャップ
④解決策を考える
自分で見つけさせる
⑤振り返り
成果がでなかった原因を具体的に抽出
このステップはそのまま問題解決手法を学ぶトレーニングになっていて、社会人としても必須科目のようなものですね。
私自身、日々の業務で与えられた仕事をこなしているだけでは面白くないし、他の誰かに取って代わられる価値しか提供できていないと感じます。そういう意味でも上記のステップを繰り返すことで、自分だけのアウトプット(価値)を作り上げていけるような子になって欲しいという私の思いとも一致します。
親子でAI時代に適応する
AIを支えるテクノロジーは日々進化しています。ですが、それらをいきなり子供に体験しろというのはちょっと酷な話です。
子供の取っ掛かりを作るためにも、まずは私たち親世代が新しいテクノロジーを積極的に取りに行きましょう、としています。
親がやっていれば、子供は興味を持ちます。そうやって新しい刺激を与え続けることで、子供自身に選ばせて本人の適性と欲求を見つけることができるとしています。
このように、子供が小さい時から色んなものを見せ、体験させることで、子供の好きなことを増やしていく教育をSTEM教育と呼びます。(STEM=Science、Technology、Engineering、Mathmatics / 科学・技術・工学・数学を通した教育)
最新のテクノロジーなどの情報を、私たち親が興味を持てば、子供の情報感度も上がります。親の世界観が広がれば、子供の世界観も広がることを肝に銘じておきたいですね。
子供は今で忙しい(親も)
現代の子供は、学校での勉強の他にも習い事や友達との遊ぶ時間、漫画やサブスクなどの娯楽により、親世代と変わらないほど忙しいというのが実態です。
著者は、親も子供も「今」で手いっぱいになっていて、未来のことを考える時間と心の余裕がないことを非常に問題視しています。
”未来に備えるために、今の課題を圧倒的に効率化する”
それが著者が到達した結論で、効率化を追求した結果、AIによる学習指導システム「Qubena」を開発しました。
このAI先生は、子供の理解度や進捗に応じてAIが最適な問題を出し続けることで、一人一人の生徒に最適化した指導を行うというものです。
解答の正誤だけではなく、解答に至る過程までも読み込んだ上で、今その子に何が足りないかを適切に判断して次の問題を出す、画期的なオーダーメイドシステムです。
まとめ
AIの台頭が目前に迫っている今、自分自身はどう子供に向き合えばいいか、本書はその疑問に答えてくれています。
私たちはまだAIが普及する過渡期に生きていますが、子供たちは確実にAIが普及した未来を生きていきます。その時に、AIを使いこなすのか、AIに取って代わられる存在になるのか。
この差を決めるのが、私たち親の働きかけであるのであれば、こんなに責任感の大きなことはないでしょう。
自分の子供が大人になって路頭に迷わないように、いま私たち親世代が意識を変えて、子供のために日頃から感度を上げていくことの重要性を説いてくれています。
ページ数もちょうど良く、読みやすいレイアウトになっていますので、是非一度、本書を手に取ってみてください。
AIと共に未来を創る!
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